メディカルトピックス
あなたの血管年齢はいくつですか? ~動脈硬化のトピックス~

動脈硬化は年をとれば誰にでも起こりうる、「血管の老化現象」です。現在、日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(癌)、第2位は心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、第3位は脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)です。このうち主として動脈硬化が原因と考えられている心疾患と脳血管疾 患を合わせると、その割合は26.5%になり、死因の第1位 の癌の30.1%とほぼ同等です。

動脈硬化とは、動脈の血管の内側の壁に余分なコレステロールがたまって、プラークと呼ばれる大きなコブを作って狭くなったり、血管が次第に弾力性を失って硬くなる状態を言います。動脈硬化時の血管は傷つきやすく、傷つくと血栓(血の塊)ができやすくなります。血栓で心臓や脳の血管が詰まると、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞といった生命に関わる怖い病気が起こります。動脈硬化を進行させる危険因子には、脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙などがあります。脂質異常症とは、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値が高すぎる、あるいは善玉コレステロール(HDLコレステロール)値が低すぎるなどの状態を言います。糖尿病では、血糖そのものが血管の壁を傷つけるため、悪玉コレステロールが血管の中に入り込みやすい状態になっています。高血圧では、血管にかかる圧力が高くなり、 血管の内側の膜が傷つきやすくなって悪玉コレステロールが血管壁に侵入しやすく、プラーク(コレステロールの塊) が破れやすくなっています。喫煙では、タバコの煙には悪玉コレステロールの作用を更に悪化させる強力な酸化物質が含まれています。こうした危険因子の中でも、一番の元凶は脂質異常症です。近年の研究報告によると、悪玉コレステロールの値だけではなく悪玉コレステロールと善玉コレステロールのバランス異常が動脈硬化性疾患の重大な危 険因子であることが明らかにされています。

自分の動脈硬化の程度を知るための最も簡便な方法は、血液検査による脂質のチェックですが、それ以外で は動脈硬化の測定法として以前から脈波伝播速度(Pulse wave velocity : PWV)があり、近年ではCAVI(Cardio Ankle Vascular Index 心臓足首血管指数)検査が良く用いられます。CAVI(キャビィ)検査では (1)動脈の硬さ (2)動脈の詰まり (3)血管年齢を測定します。測定方法はベッドで横になり心電図電極、心音マイク、カフを付け、両手、両足首の4カ所の血圧を同時に測定するのみで簡便な方法です。動脈の硬さを表すのが「CAVI」です。CAVIは大動脈を含む「心臓(Cardio)から足首(Ankle)まで」の動脈(Vasculaor)の硬さを反映する指標(Index)で、動脈硬化が進行するほど高い値となります。下肢動脈の狭窄、詰まりを表すのがABI(Ankle Brachial Pressure Index 足関節上腕血圧比)です。 四肢の血圧を測定したとき、狭窄や閉塞は下肢の動脈に発生しやすいため、「下肢の血圧」と「上腕の血圧」の比をみて、動脈の詰まりの程度を表すことができます。血管年齢はCAVIが年齢と良く相関することから、老化を反映する指標として有用性が知られています。

動脈硬化性疾患にならないためには、日常生活においては、生活習慣の改善(食事療法、運動療法)が基本です。生活習慣病などの比較的軽度の動脈硬化症や予備群の検査、 またはスクリーニングには血液検査と同時に、CAVIを経時的に測定することが有用と考えられます。

副院長 賀来 宗徳
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