メディカルトピックス
子宮頸がん

1.子宮頸がんは20~30歳代に増えています。

子宮がんには、子宮の入り口(頸部)に発生する「子宮頸がん」と、子宮の奥から発生する「子宮体がん」があります。子宮がんは、昭和50年代までは胃がんに次いで、2番目に死亡率の高い「がん」でしたが、子宮頸がんの検診の普及に伴い、その数を減らしてきました。
ところが、最近、わずかではありますが、子宮頸がんにかかる人の割合が増加してきています。その大きな原因として「子宮頸がんの若年化」が考えられています。
厚生労働省の統計によると、子宮頸がんの発生率は、この20年間で50歳以上の女性については減少していますが、逆に若い女性、特に20歳~30歳では1985年から2005年の20年間でおよそ3倍に増えています。
当院においても、子宮頸がん検診を受けた方の全年代の集計で70人に1人くらいが、細胞診異常(クラスⅢa以上)と診断されます。これを年齢別に検討すると40歳代では約100人に1人ですが、20歳代30歳代では約50人に1人と高い確率になっています。
「子宮頸がんの若年化」は、性交渉の低年齢化が進んでいることにより、子宮頸がんの原因となる高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染する機会が増えたことが、大きな要因と言われています。

2.ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの原因と考えられているウイルスです。
HPVは非常にありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性であれば、ほとんどの方が一度は感染するといわれています。このウイルスに感染しても、多くの場合は、自分の免疫力によって、自然にウイルスを排除できます。
しかし、感染した女性の約10%がウイルスを排除できず、感染が長期化します(持続感染)。
HPVには高リスク型と低リスク型があり、高リスク型のHPVの持続感染がおきると、子宮頸部の細胞に異常(異形成)が引き起こされ、さらに長い年月が経つと、子宮頸がんに進行する可能性がでてきます。
HPVに感染しているかどうかは、検査で簡単に調べることができます。
また、現在、HPV感染を予防するワクチンが実用化され、公費助成の対象となっています。HPVには多くの型がありますが、このうち特に高リスクである型に対するワクチンです。日本では子宮頸がんの原因の約70%がカバーできると言われていますが、すべてのHPV感染を予防することはできません。さらに、ワクチンは、接種前に感染しているHPVの排除や、子宮頸がんや前がん病変を治療することはできません。従って、ワクチンを接種した方であっても、検診は必要です。

3.検診で子宮頸がんは予防できます

若い世代にとって、自分は「がん」にかかるかもしれないという危機感が乏しいので、20歳代のがん検診受診率は極めて低いです。
その上、残念ながら、日本では、全年代を合計した子宮頸がん検診の受診率も24%と、欧米諸国の70~80%代に比べて、随分低い値です。
子宮頸がんは、前がん病変である高度異形成から進行がんになるまでに約10~20年かかると言われていて、前がん病変の段階でとらえることができれば、ほぼ100%、進行がんになるのを防ぐことができます。
子宮頸がんの場合、前がん病変の段階では自覚症状がないことが普通です。20歳代で発症していた前がん病変を知らずに放置していて、30歳代、40歳代になって症状が出て初めて受診して、子宮頸がんと診断されたのでは遅いのです。
子宮頸がん検診は、従来の細胞診検査だけでなくHPV検査を同時に行う併用検診が欧米で広まっていて、日本でも導入が始まっています。

産婦人科部長 小泉 郁子
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