メディカルトピックス
LEGHって何?〜子宮頸部多発嚢胞性病変〜

LEGHとは
近年、子宮頸部多発嚢胞性病変(LEGH)と婦人科検診で診断され不安を覚えて外来を受診する患者さんが増えてきました。 「LEGH」はLobular Endocervical Glandular Hyperplasia 分葉状頸管過形成の略で胃型粘液性がんの前駆病変の可能性が推察されます。 子宮頸部多発性病変には以下のようなものがあります。
Ⅰ. ナボット嚢胞:良性病変(頸管腺の出口が閉塞し粘液が貯留)
Ⅱ. 分葉状頸管腺過形成(LEGH):胃型粘液を産生する病変。多くは無症状、時に帯下異常を伴う。
Ⅲ. 胃型粘液性がん:胃型分化を示す粘液性がん。無症状もしくは帯下異常を伴い、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は関与しない。本邦では子宮頸部腺がんの20〜25%と進行した状態で発見されることが多く、化学療法・放射線療法に対して治療抵抗性であることが多く予後不良。

細胞診や組織診による術前診断は非常に困難
子宮頸部悪性腺腫は頸部腺がん全体の1〜3%を占める超高分化型の粘液性腺がんで臨床的には大量の水様性帯下や頸部の腫大、頸部の嚢胞性病変を特徴とします。稀な疾患ですが最近増加傾向にあります。さらに細胞異型に乏しく細胞診や組織診による術前診断は非常に困難です。  Ⅱ、Ⅲはどちらも通常の子宮頸がんと違い低粘稠性の胃型粘液を多量に分泌することより、水様帯下の状を呈することが特徴的です。また子宮頸部の奥の場所に多発する嚢胞性病変を形成することが多く、非常に似通った臨床像を呈します。そのため両者を鑑別することが非常に難しいです。またLEGHの好発年齢は40歳代ですが妊娠前に発症する方もおり、妊孕能 (にんようのう)温存が大きな課題となります。さらにⅡは良性、Ⅲは高悪性であり生命予後に対する影響が全く異なることから子宮摘出術前に両者を鑑別する重要性は非常に高いと考えられます。

慎重に詳細に経過観察が必要
LEGHそのものは定義上良性病変ですが、胃型粘液性がんの前駆病変となる可能性がある以上、慎重に詳細に経過観察が必要です。がん化を疑う兆候としては細胞診で異型腺細胞の出現、MRIでの病変の増大が重要であることが示唆されます。  総括としてLEGHや胃型粘液性がんに対する診断方法、治療法については残念ながら未だに確立されていません。また両者が併存していることも多く、画像検査と適切な病理的検査とを併せて慎重な鑑別をすることが必須です。婦人科検診において既存の内診や子宮細胞診だけでは絶対に不足です。検診時に経膣超音波を是非追加し、必要であればMRI検査を加えておきましょう。

理事長・院長 医師 賀来 宗明

 

 

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