メディカルトピックス
あなたはお酒を飲んで顔が赤くなりますか?
~食道がんへのリスク~

皆さんはお酒を飲んで顔が赤くなりますか?今は大丈夫でもお酒を飲み始めた最初の1~2年は顔が赤くなりませんでしたか?お酒を飲むと赤くなる体質の方をアルコールフラッシャーと呼び、食道がんにかかるリスクが高くなることが知られています。

 飲んだアルコールは肝臓で分解されてアセトアルデヒド(発がん物質)に変わります。アセトアルデヒドは普通の人であればアセトアルデヒド脱水素酵素によって分解されて無毒化されます。ところが、フラッシャーの方はこの酵素が生まれつき無い人が多く、アセトアルデヒドが体内に蓄積し、食道がんの発生につながると言われています。

 食道がんは高齢者、特に男性に多い病気とされています。早い段階からリンパ節転移をきたし、進行すると大動脈や気管にまで直接浸潤したり、血行性に肺や肝臓に転移したり、昔から治療成績が悪いがんの代表といわれてきました。治療は一般的に手術が行われますが、胸部食道がんの場合は頸部、胸部、腹部の3か所を切らないといけないため、大がかりな手術となり、かつては手術後の合併症で亡くなる方も少なくありませんでした。最近では胸腔鏡や腹腔鏡を使った手術が行われるようになり、手術成績もかなり向上しています。さらに内視鏡検査の進歩により、食道がんを早期発見できれば内視鏡治療だけで根治できる時代に入ってきています。

 当クリニックの胃内視鏡検査では食道もきちんと観察するようにしています。最新のNBI装置で内視鏡光の波長を変えて食道粘膜表面の異常血管を見つけることができるようになりました。実際の内視鏡検査ではNBIモードにてがん部分が茶色く見えるようになり、食道がんを早期発見しやすくなります。近年当クリニックにおいて内視鏡治療で治る段階の早期食道癌が数例見つかっています。

 ただ、いくら食道がんの検査・治療が進歩してきているとはいえ、食道がんにならないように普段より気を付けるに越したことはありません。フラッシャーの方であれば毎日お酒を飲むのは止め、時々の酒席のみにとどめるべきでしょう。またフラッシャーとわかっている方にお酒をどんどん勧めるのは危険なことでもあります。その他、喫煙、熱い食事、刺激物も食道がんのリスクを上げるといわれています。

 フラッシャーの方、飲酒や喫煙が多い方、食道の違和感・つかえ感・飲み込みにくいといった症状がある方には食道がんができている可能性があります。ぜひ内視鏡検査をお勧めいたしますのでどうぞご相談ください。

食道内視鏡NBI観察

当クリニックで発見された早期食道癌

消化器病センター長 賀来 宗宏
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