メディカルトピックス
帯状疱疹ワクチンが果たす 大きな役割

帯状疱疹とは
帯状疱疹の原因は水痘・帯状ウイルスです。このウイルスは初感染で水痘を発症させ、過労やストレス、免疫の低下などにより起こる2回目以降の感染を帯状疱疹と呼びます。 帯状疱疹は50歳を過ぎたあたりから発症率は急激に高くなり、7割以上は50歳以上の方です。また80歳までに3人に1人が罹患するといわれています。 最近ではメディアでも啓蒙され始めた「帯状疱疹」予防のためのワクチンですが、帯状疱疹で注意しなければならないのが合併症です。 とくに帯状疱疹後神経痛(以下PHN)、脳炎、眼科耳鼻科系(難聴、眩暈、耳鳴、顔面神経麻痺等)は深刻なものが多いのです。

看護師視点でのワクチン接種の意義
ワクチン接種について看護師の視点からお伝えしてみようと思います。残念ながらワクチンは疾患を100%予防出来るものではありません。インフルエンザやCOVID-19などでも分かるように、ワクチンを接種しても罹患する可能性はあります。 ワクチン接種の最大の目的は発症率を下げ、重症化を予防することにあります。また合併症による深刻な後遺症を残さず、生活の質を下げないことも大きな目的の一つです。

 

 

ワクチンの種類と選び方
現在予防のワクチンは2種類あり、1987年から任意接種として始まり2014年には定期接種の対象となった生水痘ワクチンの「ビケン」と2018年に承認された不活化ワクチンの「シングリックス」です。表1を見てみると、両者のワクチンの発症やPHN予防効果には大きな差があるように見えますが、なんとなく数字が高い方が良さそうだと思いがちです。しかし両者の比較は同じ条件下でおこなわれたものではない事や各々には接種不適当があるので、選択の際には慎重に判断する事も必要だと思います。 コロナワクチンの際には、接種時の痛みや副反応の強さのあまりに接種を躊躇する人が多く、痛みや副反応が接種をするかどうかの重要な因子になり得ると改めて知らされました。 当院では生水痘ワクチン「ビケン」を採用しています。 接種不適当の場合は限られますが、重要なのは接種による予防です。予防効果の高さや副反応の弱さを基準に選択されてください。

おわりに
帯状疱疹により遷延性、難治性の痛みで生活の質が大きく損なわれず、発症率や重症化の低減、間接的なPHNの発症リスクを下げていくために、帯状疱疹ワクチンの果たす役割は大きいと思われます。

看護課 婦長 看護師 田中 香

 

参考資料 1)日本環境感染学会:医療関係者のためのワクチンガイドライン,環境感染誌第35巻 Supplement Ⅱ 令和2年7月27日発行 2)CDC:Prevention of Herpes Zoster. Recommendations of the Advisory Committee On Immunization Practices (ACIP).MMWR2008;57(RR-5):1-30 3)国立感染症研究所感染症疫学センター:水痘・帯状疱疹とそのワクチンIASR Vol.34p287-288  4)帯状疱疹学術講演会:水痘ワクチンという予防戦略記録集

 

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