命のはじまりを支える専門職_ 胚培養士という仕事

生まれたての赤ちゃんの足

“胚培養士”という仕事をご存知ですか?

私たち胚培養士は生殖補助医療の現場で生命が誕生する瞬間に寄り添う仕事をしています。具体的には、培養液の調整や精液処理、卵子の回収、精子と卵子の授精、受精卵(=胚)の培養と観察、そして胚や卵子の凍結保存・融解・胚移植と、胚を扱うすべての場所で重要な役割を担っています。
受精した胚が順調に成長している姿を見ることは、この仕事の誇りであり、その胚が新たな生命となることは胚培養士にとっても一番の喜びです。

 

培養5-6日目の胚盤胞(受精卵)

培養5-6日目の胚盤胞(受精卵)

 

生殖補助医療の発展を支える

1978年に世界初の体外受精児ルイーズ・ブラウンさんが誕生し「試験管ベビー」と呼ばれ、世界を驚かせました。
以来、生殖補助医療は目覚ましい発展を遂げました。
現在では日本国内で生まれた子どもの8.5人に1人が体外受精によって誕生しています。これは2022年に不妊治療が保険適用化され、治療を受けやすい社会が整い始めたことが要因と考えられます。
不妊治療を受ける人が増える一方で、胚培養士の有資格者は2500〜3000人程度といわれています。限られた人材で安全な医療を提供できるように、培養室では日々培養士たちが集中力を保ち、高い技術を維持するための努力をし、「個人の技」を磨いています。

国家資格化に向けて

現在の胚培養士の資格は学会認定資格のため、法的には医療従事者として位置づけられていません。医師の監督のもとに業務を行う医療機関に勤務する専門技術職、つまり「胚を取り扱える技術者」とされています。それでも実際には、医療行為に極めて近い立場で生殖医療を支える存在であることに変わりはありません。
近年、胚培養士を国家資格化しようという動きが注目されています。教育・研修・倫理の基盤を整え、社会的責任を明確にする試みが進み始めています。胚培養士の国家資格化は、生殖補助医療技術を「個人の技」から「社会の制度」へと高める重要な一歩になるでしょう。

胚培養士が目指すべきもの

国家資格になることによって生殖医療の質と信頼が高まり、胚培養士の認知度も高まるのではないかと考えています。しかし、胚培養士として日々自己研鑽していく姿勢は変わらず持ち続ける必要があります。
今後も生殖医療は更に発展し、制度も整備されていくなかで、胚培養士としての社会的責任も今より明確になり、単なる「胚を取り扱える技術者」ではなく、倫理観と科学的根拠に基づく判断力を備えた「生命のスペシャリスト」になることが必要になります。そのために患者さまの想いに寄り添い、常に向上心を持って責任感を意識して働くことが、より多くの方の喜びに繋がると信じて、日々努力を積み重ねています。そして先輩培養士が培ってきた技術や知識、責任感も次世代に伝授して育成し、未来に引き継いでいくことも大切です。

胚培養士が受精卵を培養している様子

胚培養士からのメッセージ

同法人のフェニックス アート クリニックの奥の培養室で静かに情熱を持って尽力しているため、皆さまとお会いできる機会はあまりないかもしれません。影ながら患者さまの幸せを強く願って、最先端の医療技術と生命が誕生する瞬間を繋げていく、それが私たち胚培養士の使命だと思っています。
新しい命を授かりたいと思っている皆さま、胚培養士一同その想いに寄り添い、全力でサポートし続けてまいります。

フェニックス アート クリニック 主任
胚培養士 原川 智早

■クリニック情報
フェニックス メディカル クリニック
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-41-6
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