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かつては胃がん大国と呼ばれた日本もヘリコバクターピロリ(以下ピロリ菌)の診断・治療が進み、近い将来には胃がんがほぼ無くなる時代が来るかもしれません。時代とともに胃の病気や上部消化管内視鏡検査(以下胃内視鏡)の役割も大きく変わってきており、今回はその話をさせていただきたいと思います。
かつては消化性潰瘍、胃がんが全盛だった時代
私が医師になったばかりの平成初期のころ、胃内視鏡は潰瘍と胃がんを見つけるのが最大の使命でした。当時はピロリ菌の存在がわかっておらず、いまのような良い胃薬(強い胃酸分泌抑制薬)もなく、検査で毎日のように胃・十二指腸潰瘍が見つかっておりました。また発見時にはすでに進行した胃がんも多く、治らない病気の代表格として「スキルス胃がん」という病名を覚えている方もおられるかと思います。
ピロリ菌を除菌し胃がんを予防する時代
その後ピロリ菌の発見とともに日本における胃の病気の診断と治療は大きな転換を迎えることになります。ピロリ菌は1983年に発見され、1990年代に入ってから胃がんと関連性があることが少しずつわかってきました。日本においては2000年に胃・十二指腸潰瘍に対する除菌治療が保険適用され、2013年にようやく慢性胃炎に対しても保険適用が拡大されました。この頃より胃内視鏡でピロリ菌感染を疑う方全員にピロリ菌検査を行い、感染者に対して徹底的に除菌治療を行うようになりました。ピロリ菌を除菌できれば、胃・十二指腸潰瘍は再発しなくなり、胃がん発生のリスクも1/3にまで減少することがわかってきています。ピロリ菌は通常幼少期で感染すると言われており、衛生環境が良くなっている現代では新たな感染者は減ってきています。近い将来、日本では胃がんは怖い病気ではなくなる時代がやってくると思います。
ピロリ菌治療後の新しい時代へ
「ピロリ菌がいなければもう胃がんにはならないの?」という質問をよく受けますが答えはNOです。ピロリ菌感染による慢性胃炎がある方は除菌後も胃炎が残ることが多く、う質問をよく受けますが答えはNOです。ピロリ菌感染による慢性胃炎がある方は除菌後も胃炎が残ることが多く、胃がん発生リスクはゼロにはなりませんので毎年胃内視鏡されることをお願いしています。またピロリ菌にかかったことのない方(ピロリ菌未感染者)にも少ない確率ながら胃がんが発生することがわかってきましたので、数年に一度は胃内視鏡をお受けになることをお勧めしています。一般的にピロリ菌未感染者に発生する胃がんは早期治療で完治するものが多いので普段からきちんと検査を受けていれば大きな心配は要りません。
当クリニックの内視鏡検査の現況
当クリニックでは消化器フロアに3つの内視鏡室を備え、常勤医2名および大学や関連病院からの非常勤医19名体制で数多くの内視鏡検査を施行しております。
2023年には年間で胃内視鏡検査約8800件、大腸内視鏡検査約1000件を施行し、食道がん3例、胃がん12例、十二指腸がん2例、大腸がん25例を発見しております。胃がんの中には先ほどお話したピロリ菌未感染胃がんの一タイプであるラズベリー型胃がん(早期がん)を5例発見しいずれも内視鏡治療にて完治しております。
ピロリ菌感染がある方もない方もぜひ定期的に胃内視鏡検査をお受けになることをお勧めしております。ご希望される方はどうぞお気軽にご相談ください。
消化器病センター長 医師 賀来 宗宏